記憶の扉
そういえば、わたし、舞台がとても好きだった。
小学校低学年のとき、上級生たちのクラブ発表会の演劇に感動して号泣して、絶対に演劇部に入ると決めた。
4年生になって演劇クラブに入って、はじめて与えられた「子供①」の役で、たった一言のセリフが嬉しくてたまらなかった。
練習も、舞台の準備も、出番までの舞台袖も、一瞬で終わる本番も、舞台上で浴びるスポットライトも、たまらなく好きだった。
舞台を観に行く機会があると、その世界に没頭し、ひきこまれた。
自分で台本を書いて、友達と演劇ごっこをした。
あるもので、世界観をつくるのが楽しかった。
それが、わたしの遊びで、創造だった。
小学校5年生の3学期で転校した先には演劇部はなく、そこから舞台の道に戻ることはなかった。
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もしも、わたしが、ずっと好きなことに没頭できていたとしたら、舞台や演技に関わることをしていたんじゃないかと思う。
いつの間にか、ひと前にでる仕事は怖いものなんだと刷り込まれて、みないようにしてきた道。
わたしが歩まなかった道。
パラレルワールド。
3日前に出逢った、いま、女優として舞台に立つひとと、互いの人生の深く掘り下げながら語り合っていたら、そんな幼い頃の記憶の扉がひらきだした。
わたしの魂を震わせていたものは何なのだろう。
わたしにブロックをかけていたものは何なのだろう。
そこに沢山の宝物が眠っている気がするから、そのひとつ、ひとつを、丁寧にみてあげようと思います。
どんな発見があるかな…